まんぷく::日記

2003年から2007年までのはてなダイアリーをはてなブログに移設したものです。現在はhttp://ima.hatenablog.jp/を更新中

「本を出す」より「本を作る」ほうが好ましい

を読んだ。

ここでいう「自費出版」はいわゆる同人誌(=筆者が制作費を全額負担、ISBNはつかない)のことではなくて、「協力出版」や「共同出版」といったもの。このビジネスモデルでは、新風舎文芸社といった版元がよく知られている。

こういう出版ビジネスでは、制作費や販管費の一部や全部を、著者が負担する。その代わり、出版社が取り扱うからISBNがつく。ISBNがついた本は、理論上は全国の書店で扱えることになる。Amazonにも載る。

でも、そういう本が売れるわけがない。だって取次から書店さんにその種の本が届けられても、棚に並べられることはまずないか、並んでもごく短期間だから。

ほとんどの書店さんは、この手の本を特別扱いしない。むしろそういう版元の名前は知っているから、その本が面白いから出版されるのではなく、多くの場合、著者がある程度お金を出したために出版されていることも知っている。

協力出版系の版元は、著者に対して「弊社で本にすれば一般の書店に並びます」と言うけれど、こういう版元の誰とも知れない著者の本は、書店で有名作家を押しのけられない。というような話。

なお、書店さんの中には、一部の棚をこの種の版元が買い上げているところもある。その棚には、自社の本だけがずらりと並ぶことになる。本が売れなくても、棚を提供する代金を受け取っているから書店さんは困らない。版元も、著者からお金を受け取っているから困らない。そしてここにおいては、確かに「あなたの本が書店に並んでいる」ことになる。

自信があるなら、普通の出版社に持ち込むべきだ。一社が駄目でも、二社三社、安易に金を出さず、足を棒にして出版社廻りをして欲しい。それでも駄目なら、まず自分の作品を疑ってかかるべきだ。

もし本当に傑作なら、金など要求せずに、一緒に本を作りましょう!と言ってくれる編集者がいるはずだよ。

のべるのぶろぐ: 自費出版の本が売れる訳ない!

いや本当に。

「持ち込みなんて読まれないし採用されない」などと思うなかれ。京極夏彦は持ち込みでデビューしたそうじゃないか。編集者はつまらない企画や原稿には冷たいが、面白い企画や原稿にはいつでも飢えているのだ。

それに、上の記事に「それだったら同人誌で安く仕上げて…」とあるように、ただ「本を作る」だけならずっとずっと安くできる。同人誌の印刷所に原稿を持ち込めば、10万円で200冊は作れるだろう。それでいいではないか。

ではなぜそういう方法をとらないのか。

それは、同人誌を作ることは「本を作る」であって、「本を出す」ではないからではないか。さらにいえば、商業出版にこだわる人(=共同出版系の版元にとってのお客さん)には「本を出したことがある人、つまり《本の著者》という肩書きを得ること」が、ある種の箔になるという幻想が後ろにあるように思う。

共同出版系の版元は、「本を出すこと=すごいこと」という幻想を商材にしている。『さおだけ屋』に出てくる、住宅地のフランス料理店のような商売だ(「フランス料理店の料理教室」とうたい、それで利益を出す。「フランス料理店の」の冠を維持するために店は開くが、食べに来るお客さんがいなくてもよいしくみ)。それだけならまだいいのだが、事業を成り立たせるために大量の新刊を発行し、そして返本されている。流通を圧迫している面があり、ここはどうにもいただけない。

編集の仕事をしていると、ときどき相談されることがある。「自分がしてきた仕事を、本にまとめて出版できないか」といったものだ。「自分の紀行文を」や「自分の趣味の成果を」のこともあるし、「自分が世の中に伝えたいことを」のこともある。いずれにしても、基本的に答えは同じだ。

「一般の書店で売ることにこだわらないのがよいと思います。同人誌のような体裁の冊子として必要な部数だけ作って、関係の方々に配っては」。

これらの企画は、全部が箸にも棒にもかからないわけではない。その人しか持っていない知識や知恵を、なにかの形で残しておくのはよいと思う。

しかし、一般の書籍として流通させるのがふさわしいかというと、なかなか難しいのが実情だ。

出版社が出版して、書店に流通させる一般書(ここでは文庫や新書やマンガでない、なんというか「普通の本」のこと)となると、書籍の形態や価格にもよるがおおむね数千部が売れないと赤字になる。「部」という単位では実体をつかみにくいだろうか。世の中の誰とも知れない数千人が、1000円なり2000円なりのお金を出して買ってくれる本でなければ、普通の商業出版は成り立たない。基本的にマスを相手にした世界なのだ。

編集者は、磨けば光る企画や原稿を商品に仕上げるプロである(ダメな企画や原稿をそのまま本にしてしまう編集者は「編集」者ではない)。だから、そのままではいまひとつな企画や原稿でも、本として世に出せる可能性はもちろんある。

でもそれも限界があって、河原の石をどう磨いても輝きは鈍い。協力出版だの共同出版だのにお金を出して飾り立てても、客の目利きは厳しいし、なにより書店の棚に並びづらいことは前述の通り。投資に見合うことはまずないだろう。

そもそも、世の中は宝石のようにまぶしく輝く本ばかりでなくてもよい。ISBNがなく、一般に流通しない同人誌でも本は本であり、それを読みたい人がわずかでもいるなら本にするのがよいと思う。本当に本を作りたい人は、流通がどうとかを考えず、とにかく作ってしまう。そういう衝動で作られた本は、宝石とは違う独特の美しい輝きを放つ。

ここで「えー、同人誌ー?」と抵抗を感じただろうか。それが「本を出す」ことにこだわりすぎなのだ。「本を作る」ことではなく、「本を出す」ことが目的になっている。あの作家と同じ棚に自分の本が並ぶ様子を思い浮かべてニヤニヤしても、それが実現する可能性は0%に限りなく近い。宝くじを楽しみではなく、純粋に投資目的で買うようなものだ。

宝くじを買わなくても、堅実にお金を増やす方法はほかにもある。同じように、商業出版でなくても本を作ることはできるし、また読んでもらえる機会は作れる。コミケで売ってもよいし、中野のタコシェのように同人誌を積極的に扱う書店もある。

伝えたいことが優先で、本という実体にこだわらなければ、ネットに公開してもよい。その後、ブログを本にまとめるサービスを使うのもよいだろう。はてなダイアリーブックだと単価は高いが、同人誌の印刷はある程度の冊数を作ることが前提だから、自分用に一冊だけでよいならむしろ安くなる。ネットで評判になり、「書籍化」という流れもあるかもしれない。

本を作りたい人は、その内容が商業出版でいけると思うか、それとも同人誌として作るのがよいか、よく考えてほしい。適材適所で「本」の形にしてほしいと思う。

参考書

自分の企画を本にしよう!―出版社に採用される「企画書&サンプル原稿」はこうつくる

自分の企画を本にしよう!―出版社に採用される「企画書&サンプル原稿」はこうつくる

ここで知った。↓

自費出版共同出版ではなく、出版社の「企画出版」として、大雑把にいえば著者による制作費負担のないかたちの出版として、自分の本を出したいと願う人のために、出版社への企画の売り込み方を解説した本です。

未公認なんですぅ: うちの本、実際に役立ったそうです。よかぁったぁ〜っ(ダリオ・ポニッスィ風に)

こういう「メソッド」本は、自分の目的を達成するためのルートや近道を教えてくれる。これも「ライフハック」に近い気がする。

こういう本を使って(使わなくても)、いい企画や原稿ができたらぜひお知らせください。と最後に宣伝。